お別れ会と喪服文化

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アイキャッチ画像と写真は全てイメージ素材です。 image photo by envato elments (all rights reserved)

会社役員をしていた頃の話です。

資材の調達や建設現場の工事下請けを契約する現業実務の担当役員だった筆者は、約3年間の執行役と本部長を兼務していて、主に社外の協力会社の方々とのトラブル解決や大口の商談を担当していたものです。

そして、年間で4回程度は協力会社のVIPの葬儀に参列していました。

協力会社と一口に言うが、その実は、自分の所属する会社よりも何倍も大きな企業の元会長であるとか、創業者であるといった業界の偉人です。葬儀というのも、ほとんどの場合、家族との本葬ではなく、広く業界関係社への綺麗的な「お別れの会」というイベントでした。

相手が産業界の大物ですから、このイベントへの招待状は社長宛に送られてきます。私が在籍していた企業の社長に案内が来るのです。そして、ほとんどの場合、社長はその「お別れイベント」には参加せず、案内状が担当執行役の筆者に送られてきます。

秘書役からメールがきて、これこれの案内が来たので「社長代理で参列してくれ」という依頼がくるのです。無論、執行役員が社長の依頼に対して「嫌だ」とは言いません。よほどの理由がない限り、代理出席の任務は絶対命令です。

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葬儀はいつまで続くのか

業界人の葬儀のような「儀式」は、おそらくこの先5年程度で日本の産業文化から消滅するのだろうと思います。人が逝去して他界することは、悲しい別れではなく、本人の卒業イベントであり、大願成就して現生の牢獄から解放されるという認識は、ますます強く意識されるようになりました。

30年前と今の企業文化を比べてみれば明らかです。かつては、社員の父母が亡くなると即座に社内通達がでて、上司や同僚が大挙して「お香典」を持ってお通夜や葬儀に参列したものです。最近、特にパンデミック以後、社員の厳父・ご母堂の訃報は通知が回るものの、全ての社員は、家族葬や近親者のみの葬儀で済ませますから、香典や献花は「おことわり」しています。

お別れの会の定番

産業界の大物が他界した場合も、以前のような盛大な葬儀ではなく、ごく儀礼的な「お別れの会」が主流となっています。

受付で、社長の名刺と香典をお渡しした後は、菊やゆりの花で飾られて故人の写真が中央に置かれた献花台に向かって参列します。そして、横からそっと渡されるゆりの花(生花)を持って順番に前に進むのです。

この写真は仏式の葬儀の祭壇ですが、これから戒名の札と木製の社を取り去れば「お別れ会」の献花台になる。この写真の出展は wikipedia 「葬儀」

ほどなく最前列に出たら、ゆりの花を献花台に置いて、一礼・合掌するのですが、その習慣はほんの7〜8秒でしょうか。後は、どこの誰ともわからぬ他の参列者の動きと同時に、右側にズレて退出するだけです。

筆者が知る限り、最も予算のある企業は、この献花会場の脇で弦楽四重奏団が葬送曲を演奏していたものですが、ほとんどの場合は、録音された悲しげな音楽が流れています。

驚くべき産業界の風習

ある日のことですが、「お別れの会」の一連の流れの中で、筆者(無禄)が、ある意味「恥ずかしい」思いに苛まれた失敗がありました。

「お別れ会」については、開催元の企業からは「平服でいらしてください」という説明があるのですが、これもまた儀礼的なものであり、逝去した人物が大物であればあるほど、参列者は完璧な黒服・黒ネクタイで参列しています。平服を見ることは、結局一度もありませんでした。

社長を代行する執行役であった筆者も、こういった儀礼的イベントの参列するために、常に喪服である黒のスーツと黒ネクタイをロッカーに準備していましたから、ぬかりなく喪服姿で「お別れ」会場に赴いていたのです。

しかし、筆者の失敗は「靴」です。

ある時、社長の代行で業界の偉人の「お別れ」イベントに参加した筆者は、全員が喪服で参列することは「常識」と理解してましたが、「靴ぐらいは黒でなくてもよかろう」と思って自分が気に入っている履きやすい茶色の革靴をはいて参列したのです。

ところが、会場についてみて、びっくり仰天。何と全ての参列者や関係者が、完璧なまでに揃って「黒靴」をはいているのです。

茶色の靴は筆者だけです。そして、全てが黒で埋め尽くされた環境では、茶色の靴というのは非常に目立つのです。

Businesswomen standing together in the office

おそらく、ここまで徹底した黒靴のルールは日本だけでしょう。筆者は、海外出張や海外生活の機会が多かったために、日本以外の国で葬儀に参列することもあったのですが、靴の色まで判で押したように「黒」という光景は一度も見ていません。

軽いショックを受けた筆者は、その日のうちに黒い革靴を購入して会社のロッカーに常備することにしたというわけで。

筆者は、無類の「革靴嫌い」で、役員の時代でも、靴は出来るだけ柔らかい素材のもので、色も黒はあまり好きではなかったのです。しかし、ここまで徹底して黒ずくめを慣行する日本の企業文化には、驚嘆します。

生成AIの見解

問:日本国内、特に東京都内で、偉人や有名人の葬儀や「お別れの会」に参列する場合、喪服は当然としても、靴は「茶色」でもよいと思っています。茶色の靴で葬儀に参加するのは失礼でしょうか?

答:一般的に、日本の葬儀や「お別れの会」では、靴の色も含めて服装に厳格な礼儀が求められることが多いです。特に葬儀は悲しみを表す場であり、服装は控えめであることが望まれるため、黒い靴が通常の礼装として推奨されています。茶色の靴は一般的にカジュアルな印象を与えるため、故人への敬意が伝わりにくいと捉えられることもあります。

ただし、参列する葬儀やお別れの会の形式や規模によっても異なります。比較的形式ばらないお別れの会や家族葬の場合、やや柔軟に捉えられる場合もありますが、基本的には黒の靴を選んでおく方が無難です。

最後までご覧いただき、ありがとうございます。

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