米国の運命を動かしたバトラーの奇跡

時事ネタ雑記

2024年7月13日の午後、米大統領選挙を控えた有力候補のトランプ元大統領が、遊説中のペンシルバニアの年でスナイパーに狙撃された事件は、全米のみならず世界の政財界を震撼させた。トランプ氏は、暗殺者が放った銃弾の直撃を受けたが、ほんの数ミリか数インチの誤差により右耳たぶの上部を裂傷しただけで、絶命する事態には至らなかった。

2日後の15日に筆者が視聴した十数件の動画報道の中で、米国のジャーナリストが発言した言葉が、少なくとも米国民の半分ないしはそれ以上が受けた背筋の凍る体験を明確に表している。

I don’t know how to overstate how big and important it is in the trajectory of this country’s future that those few millimeters were missed.

Because it scares me to think what would have happened if that bullet had grazed just a few inches further over and killed Donard Trump. I genuinely think we would have political violence and instability and polarization and conflict surged to dangerous  levels I’ve never seen in my lifetime here in the US.

あの数ミリメートルの誤差が、この国の未来にとってどれだけ大きく重大な数ミリであったか。どんなに強い言葉を使っても、この重大さを表現しきれはしない。

(私は)確信する。もし、あの銃弾の軌道が数インチ違っていてドナルド・トランプを暗殺していたら、この国は、我々米国民が体験したことのない暴挙・動乱・二極化・紛争の極みに晒されただろう。

Brad Polumbo, US Journalist & commentator ブラッド・ポルムンド、米ジャーナリスト

出典:Sky News Australia

出典:ジャーナリストが発言した報道 youtu.be/YSPA3z7Q2XQ?si=UZPBgEkGlSzLjc-d
狙撃されて傷を負ってまで、このような意思表示ができる人間はまずいないという。
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分断と二極化の極みにある米国

米国という国は、我々昭和生まれの人間が持っていた「世界を管理する大国」から、大きく転落して世界で「最も手に負えない混乱の国」に成り下がってしまった。

先日の大統領候補バイデンとトランプのディベート報道をみて、1960年代のニクソンとケネディのディベートの動画記録を改めて見てみた。

過去の2名と現在の2名とでは、残念ながら政治家としての素地が違うという印象が強い。

聞けばトランプ氏も本当は大統領選への出馬には消極的だったという。バイデン政権があまりにおかしなことになっているので、国民に押されて候補になったのである。

ケネデイが就任したのは、彼が40代の頃である。60年代の米国のテレビ報道に記録されている40代のJFKの弁論は、現在の米国の 80代の候補者の弁論よりもはるかに質が高い。

日本の技術も、1980年代には世界一と賞賛されていたが、現在は世界をリードするレベルではなくなった。日本の政治も然り。米国も日本も質が低くなって、本来の力を出せないまま低迷しているように見える。

それにしても、米国の移民問題、麻薬問題、政治権力の分断と騙し合いの日々は酷いことになっている。トランプでなければこの苦境は救えないのか?なぜバイデンの後継者をすぐに擁立できないのか?用意周到な暗殺まで企てる社会が、話し合いでより良い解決策を持てないという現実が不思議でならない。

Security Breakdown

米国では、今回の暗殺未遂事件について、トランプ候補の安全を確保する役割を負っているシークレットサービス(以後 ”SS”)の「安全保障の瓦解」(Security Breakdown)  だというコメントが続出している。その場で殺害された暗殺犯が演説会場に接近できていたこと自体も問題視されているが、近隣の市民がライフルを所持した不審者が近隣の建物に登っている様子を見つけて強く通報したことに対してSSの反応が鈍かったといった報告を聞いて米国民は不満を持った。

暗殺未遂直後の米国内の動画報道では、トランプの演説会場に隣接した建物の屋上に配備された護衛の狙撃手が、犯人を狙撃する瞬間を捉えて応戦している様子が映し出された。それをみたジャーナリストやコメンテーターは、容疑者が特定できていたのに、なぜトランプが狙撃されるまで行動しなかったのかと厳しい批判を浴びせている。少なくとも、トランプ氏の演説を即時中止すべきだったと評価されている。

7月16日には米国の全国紙が Secret Service を強く批判。Wall Street Journal は、今回の暗殺未遂は、ここ数十年で最も驚くべき大失態であったと評した。

SSがいつまでも記者会見に応じなかったことも問題視されている。

狙撃犯と凶器

トーマス・マシュー・クルックス(英語: Thomas Matthew Crooks、2003年9月20日 – 2024年7月13日)について7月17日までに、実に多くの情報が流れた。

曰く、いじめられやすい性格で孤立していた、また射撃訓練のトレーニングを受けていたといった情報から、世界トップの投資会社 BlackRock の育成プログラムの生徒であったといった説もある。この20歳の男が単独でトランプ氏を狙ったのであれば、警戒厳重な大統領候補の遊説イベント会場近くで、あまりにも簡単に近隣の建物の屋上に上がれたことが大きな問題とされている。

自民党の青山繁晴によれば、クルックスが使用したライフル銃AR-15は、いわゆるスナイパーが使う狙撃用の道具ではなく「乱射」のためのライフルだという。つまり、狙撃でなく、不特定多数を殺傷する恐ろしい武器なのだ。暗殺未遂事件でトランプ以外の一般市民が犠牲になった理由はここにある。

AR-15のような乱射用ライフルの特徴は「連射機能」であり、引き金を引くことで、充填された弾丸を連続して発砲ですことができる。狙撃用のライフルは、命中精度を最優先するもので、弾丸の充填は一度に一発だけであり、引き金一回で一発が原則である。

トランプの護衛についていたスナイパーが、クルックスの発砲とほぼ同時に迎撃したことは、米国の報道で明らかだが、実際にクルックスの銃から発せられた発砲音は3回だった。このことからも凶器が狙撃でなく乱射用のライフルであったことがわかる。

7月19日に動画サイトに投稿された米国の熟練狙撃手の解説によれば、クルックスとトランプ候補の距離は、ライフルの初心者が最初に通過する狙撃技能テストと同等の距離であり、充分熟練していない狙撃手であっても90%の確率で標的を狙撃できる距離だという。

トランプ候補は、文字通り「九死に一生を得た」のである。

人類は暗殺が起きない環境を作れない

思い返せば、地球の人間の歴史は、数多くの暗殺劇を繰り返してきた。

筆者の記憶に強く残るのは、やはり1960年代のあの「ダラスの熱い日」のJFKの暗殺劇であり、安倍元首相の暗殺であるが、他にも普段から思い起こして繰り返し追悼されることの少ない暗殺劇は数えきれない。

人が人を殺すことで、共存する環境管理を解決しようとするモチベーションから逃れられない虚しさは、いつまで経っても解消されない。

殺し合う人間の性分を痛烈に批判する意味も含め、トランプ候補の長男の妻であるLala Trumpは、トランプを救えるのは神だけだとする啓示を意図するような画像をソーシャルメディアに投稿して話題となっている。

出典: @LARALEATRUMP July 14, 2024

勘繰れば勘繰るほど闇が深くなる

トランプを護衛する狙撃チームは、明らかに狙撃犯を特定できていた。なぜ犯人が狙撃を実行するまで犯人を拘束しなかったのか?

憶測1:性善説で言えば、暗殺犯と思しき人物はまだ若く、見た目は素人である。手に持っているライフルも「モデルガン」かもしれない。本当に狙撃するまでは、迂闊に攻撃することは出来ない、つい先日もモデルガンを所持していた10代の若者を警察官が射殺して問題視された。

憶測2:トランプ側の狙撃チームは、暗殺犯とおぼしき若者が、トランプに向けて発砲した直後(報道では数ミリセカンド)に暗殺犯を狙撃している。性悪説を言えば、上層部の「命令」で「暗殺犯が発砲するまで待って、発砲直後に射殺せよ」と指示されていた可能性がある。トランプ殺害のために雇われた暗殺犯に、暗殺の仕事を完了させることと、完了後に即時抹殺するという2つの目的が隠されていたのではないか?

青山繁晴氏の情報から、凶器は乱射用のライフルなので、巨大な黒幕が背後にある精緻な策謀による暗殺ではなく、乱射目的のやや愉快犯的な米国独特の乱射事件であったのだろう。憶測2ではなく、1が事実に近いだろう。トランプ側のスナイパーの発言によると、上層部から発砲許可が下りていなかったために、犯人の発砲前に引き金を引けなかった。

今後の捜査の進展と詳細の判明を待とう。

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