またビットコイン流出! 無知な信用大国 日本

時事ネタ雑記

アイキャッチ画像はイメージ素材です。事件の当事者とは無関係です。photo by envato elements (all rights reserved)

2024年5月末。 NHKのオンライン報道によると、暗号資産の交換業を行う「DMMビットコイン」は、31日午後1時半ごろ、ビットコインが「不正に流出」していることを検知したと公表した。

流出したビットコインの数量は、4,502.9ビットコインで金額にして480億円相当・・・

日本で同様の不祥事が起きたのは、10年前の2014年。

大手の取引所だった「マウントゴックス」で、およそ470億円に相当するビットコインが失われ、「マウントゴックス」はこれをきっかけに経営破綻した。

あれから10年も経過しているのに、何一つ学習できていない日本のビットコイン運用市場を見て、筆者は呆れている。恥ずかしい事この上ない。

この国の暗号通貨取引市場の無知・無防備、ここに極まれりといったところだ。

2021年に米 Blockchain Council のCBE ( Certified Blockchain Expert )の公式認証を受けた筆者が、この事件を徹底解明するので、賢明な読者のみなさんは、この記事を参照して、決して被害を受ける側に巻き込まれないよう知見を深めていただきたい。

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そもそも「流出」とはどういうことなのか?

暗号資産の取引所も、業界も、マスコミも、全員揃って「流出」という(筆者に言わせれば、間のぬけた)安易な単語でこの事件を説明している。

「流出」を説明する教養豊かな解説報道もなく、事件を傍観する国民も、被害者も、暗号資産などの専門サイトまでも、ただ「はあー」といって亡くなった価値が「戻ってこないだろう」という、全く無知な結論を共有して泣き寝入りである。呆れたものだ。

このまま、事態の説明がなされずに、単に取引所が破綻して終わりになるなら、日本の暗号資産業界・市場は「不勉強の集団」と言わざるを得ない。

「流出」という言葉の受け売りが、このての技術の専門のサイトでも平気で使われてい流。

まず、「流出」という単語は、誤解を招くだけなので、使うべきじゃあない。

ビットコインに代表されるブロックチェーンの市場において、暗号通貨の価値が、文字通り「流れて消えてなくなってしまう」などというバカなことは絶対に起こらないのだ。

この事件で、世間が「流出」といっているのは、正しくいえば、

正規の所有者(Aさん)の秘密鍵番号を不正に入手した何者かが、Aさんの許可なく、勝手にブロックチェーン上のAさんの口座にあるビットコインを、別のアドレス(ビットコインの電子的な預金口座)に支払う取引をP2P環境に打ち込んで、まんまと別アドレスにビットコインを振り込んだ。

ということだ。

もちろん、この犯罪は、1件だけの資産取引では成立しないだろう。4,500単位以上のビットコインが、一つのアドレスに置いてあるというようなことは、ほぼあり得ないので、

犯人は、かなりの数のAさんとは別の正規の所有者の秘密鍵を入手して、所有者のビットコインを、片っ端から別の口座(アドレス)に移したのだ。

それ以外に、ビットコインが流出したという表現と一致するような事象はあり得ない。

いや、正しくは、「流出」などしていないのだ。

これを明確に説明できる著名人は、筆者の知る限り一橋大学名誉教授でイェール大学のPh.Dを持つ野口悠紀雄教授だけだ。マウントゴックス事件の頃の教授の講義でも、この手の事件の解説をしていたので、今回もぜひメディアに登場して解説していただきたい。84歳でいらっしゃるので、ご高齢だが、オンライン会議で、なんとかお願いしたいものです。

なぜ「流出していない」と言える?

ビットコインの運用が始まった2009年1月3日以来、14年と5ヶ月の間、この巨大なブロックチェーンのデータベースに登録されたビットコインは、全て保管されており、ブロックチェーン内部で移動はしているが、一度も外部に流出してはいない。

それは、今でも誰でも見ることができるビットコインのブロッックチェーンのデータをチェックすれば瞭然である。ブロックチェーンの透明性とは、まさにこのことだ。

そして、毎日24時間、ほぼ休むことなく続けられているビットコインのコンセンサスアルゴリズムは、データが一つも流出することなく整っていることを繰り返しチェックしているのだ。それこそがブロックチェーンのコアの機能に他ならない。

たとえ、今回のように、一時的に33バイトの秘密鍵暗号が盗まれて、正規の所有者のビットコインが悪意の第三者に奪われたとしても、奪われたそのビットコインは、必ず同じブロックチェーン内の誰か他の秘密鍵の持ち主のアドレス(口座)に移動されている。消えて無くなることはない。

では、奪われたビットコインが現金化されたらどうなるのか?と誰もが思うだろう。

盗んだ犯人が現金化する際には、やはりブロックチェーン内部に取引記録が登録されるので、現金にする人間は取引所か、あるいは任意のP2Pユーザーの目の前で特定されることになる。現金を出した人物なり団体は、自分の秘密鍵と連携しているアドレス(口座)に現金相当のビットコインを自分のものとして登録できるのだ。

恐らく、犯人は、秘密鍵を入手した後に、ビットコインのブロックチェーンのネットワーク内部で、無数の新しい取引を展開して、あたかも一滴の水銀の塊を、複数の毛細血管に流し込むように細かな分割取引を行っているはずである。これは結構な手間だが、不可能ではない。

これをトレースするのは、非常に手間がかかるので、誰もやりたがらないだろう。

もちろん流出の被害にあった取引所もそんな手間をかけるリソースなど持っていない。でも、本当にやる気ならできるのだ。

ここで最も重要なポイントは、「盗まれたビットコインは、必ずブロックチェーンのどこかに眠っているのであり、その場所(アドレス)を見つけることは、可能である」という事実だ。

P2Pネットワーク環境でブロックチェーンを動かせる人間なら、追跡作業を行うことは容易だ。

筆者は探偵では無いので、これ以上は追求しないが、誰かが、事実を捻じ曲げて、秘密鍵が盗まれた事実を隠蔽している可能性が高い。

今回の事件で被害を受けたことになっている「DMMビットコイン」が、今すぐにやらなければならないことがある。それは、流出したビットコインの公開鍵のリストを開示することだ。

盗まれたビットコインを追尾する専門家は?

こういう犯罪を暴いて、犯人を特定するために活躍する専門会社も存在する。

そのうちの一つは、イギリスに本社を構え、日本にも支店を持つ暗号通貨関連の犯罪捜査専門会社「Elliptic(エリプティック)」だ。

Ellipticは、ブロックチェーン分析を通じて不正行為の検出やリスク管理のためのソリューションを提供しており、日本を含む複数の国に拠点を展開している。

エリプティックの日本支社のHP

彼らに追跡を依頼すれば、盗まれたビットコインの特定と、現在の所有者を突き止めることは可能だ。

筆者が推測するに、恐らく、今回流出問題を起こしたDMMは、既にこの種の専門会社にコンタクト済みだろう。

その上で、状況を調べた専門会社のアドバイスを受けて、報道機関に「流出」という便法を使って情報公開したのだろう。

それ以上の深い事情は、現在のところは闇の中だ。

金融庁が何かできるかといえば、失礼だが、多分、何もできないだろう。

Ellipticは、今回のような事件については、特集記事をネットにアップすることがある。もしこの会社が解説記事を出すようなことがあれば、このブログでも取り上げることとしたい。彼らは本物だから、まともな解説になるだろう。

被害者はどうすれば良いのか?

今回の事件でビットコインを盗まれた被害者は、DMMが担(かつ)いでいた保険契約のおかげで、同額の還付を受けるのだろう。結構な話だ。

それで、もう2度と取引所のビットコインに手を染めないなら、それがベストだ。

もちろん、心機一転、自分でビットコインを学んで、数テラバイトのハードディスクを搭載したPCを準備して、「自分で」P2P環境に入ってビットコインをいじるなら、安全に取引ができるだろう。(残念ながら、数百ギガバイト程度のパソコンでビットコインのブロックチェーンは扱うことはお勧めできない)

そもそも、他人が運営する取引所に「秘密鍵」を管理させるなどということ自体、愚の骨頂なのだ。

取引所というのは、小規模な銀行のようなものだ。ビットコインが発明された趣旨とは180度反対側のビジネスでしかない。

せっかく銀行などの第三者が介入しない取引システムを作ったのに・・・発案者は嘆いていることだろう。

もとより、ビットコインを発明したサトシナカモトも想定していない、便乗ビジネスに過ぎない。今回のような不祥事が起きないためのシステムが、サトシナカモトのビットコインなのだ。(彼は、ビットコインで「銀行の介入を不要とする取引システム」を提案した)

取引所が群雄割拠しているうちは、日本のエコシステムはいつまでたってもブロックチェーンや暗号通貨の有効活用は出来ないだろう。今回のような「流出」事件も増えるだろう。

ビットコインを精力的に宣伝している市場文化そのものが、ビットコインの発明趣旨と正反対のことをやってるわけだから、それこそ「お笑いぐさ」の茶番劇だ。

取引所に、自分の秘密鍵の管理を委託することが、いかに愚かなことか!

今から10年ぐらいすれば、日本のインテリ層が、はっきり理解できるようになるだろう。現状では前述の野口悠紀雄教授が、このことの愚かさを力説している。教授がいくら説明しても、世の中は一向に耳目を向けていない。残念なことだ・・・

まあ、人間同士の「信用大国=日本」だから、取引上で、ビットコインを扱った気持ちになってみたいのは理解できる。だから、今の日本の暗号通貨市場文化を筆者がことさら否定するつもりは無い。

今の状態は、言ってみればまだ、ブロックチェーンのエコシステムの本質を知らない中学生が、いよいよ高校生レベルになろうかといった、思春期・反抗期あたりなんだろうと思う。

早く大人に成長して欲しいものだ。

最後まで参照いただいたようですね!ありがとうございます。

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